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私の経験上、歯科医院の経営は一般的な会社組織や経営母体とはかけ離れたビジネスの形です。
そもそも株式会社とは「企業利益を最大化させる」ことを目的としています。
その目的を果たす方法として様々なマネージメントの形態がありますが、やはり目的は「利益を上げること」に集約されます。

これほど単純で明快な軸はありません。この軸である目的を達成するために商品開発、販売活動、人材育成等 様々な企業努力と投資を行うのです。
この単純明快な論理でクリニックもマネージメントできればよいのですが、私自身クリニックの開業を事務方として行い、経営者として5年クリニックの実務を取り仕切ってやっと6年目にしてほんの少しですが一般企業の考え方に組織が近ずけたような次第です。
以下は、一般企業とクリニックの圧倒的な違いを私の感じたままに並べてみました。

クリニック 一般企業
(1) 保険診療の場合、顧客の支払いは一部 全額顧客の支払い
(2) 社長が国家資格保持者(医師) 社長に国家資格不要
(3) 社員が国家資格保持者(衛生士、看護師) 社員に国家資格が必要な職種もある
(4) 社員の大半が女性 職種によって様々
(5) 顧客は「患者」 顧客は「お客様・クライアント」
(6) サービス販売者=先生 サービス販売者=営業マン

ざっくりと、こんな感じでしょうか・・・
さて、では(1)~(6)の項目に関して以下に、ご説明していきます。

1.

クリニック 一般企業
(1) 保険診療の場合、顧客の支払いは一部 全額顧客の支払い

これは一般ビジネスと比べて比較のしようがないくらい優位なビジネスモデルです。
提供したサービスの対価を国や地方が支払ってくれる業態は他にはありません。
医師免許を取得し保険医となったメリットですが、この部分が非常にやっかい、かつ足枷となっているところでもあります。そのあたりは後ほど述べます。
いずれにせよ、ここが医療機関のサービスの質と競争力の欠如を招いている部分です。サービスの質とは医療技術サービスの質ではなく医院自体の経営総合力のサービスの質のことです。競争力とはスタッフの顧客に対する心使いと危機感の低さです。

つまり、この(1)を顧客の支払いを全額負担にすると上記の欠けている部分は否応なしに良くなります。顧客の全額負担ということは「自由診療」ということになります。自由診療ということになると必然的に、顧客のサービスへの要求や要望は高くなりますので顧客への対応等、接遇力は強化せざるを得ません。
つまり、保険医療機関には保険診療の甘えがあると私は思っています。
保険診療の報酬には問題は多々あると思いますが、現在もこれからも私たちは自力で経営を行っていくことができるよう準備をしておかなければなりません。

なぜなら・・・
国がクリニックを守ってくれますか?
国が医療を守ってくれますか?
私にはそんな神頼みのような経営は到底できません。

経営である以上、ありとあらゆるリスクをコントロールしていかなければなりません。
私には保険診療が100%に近いクリニックの運営は恐ろしくて、とてもできません。やはりある程度(50%)の自由診療の売上を確保できるようなクリニックでないと顧客へのサービスの質の向上も望めませんし、十分な広報戦略を行うことは難しいと思います。

2.

クリニック 一般企業
(2) 社長が国家資格保持者(医師) 社長に国家資格不要

クリニックの開設は医師しかできません。医療法人の理事長も医師しかなれません。また、クリニックの管理者も医師しかなれません。
当然といえば当然かと思います。
院長先生はクリニックで1番の技術者であり、社長であり、行政対応の責任者であり経営責任者です。到底考えられないほどの労力を背負っています。
「クリニックで1番の技術者」に関しては問題ないと思いますし、患者さんもそれを望んでいるかと思います。
あと、「クリニックの診療現場での最高指揮官」であるのも必要かと思います。

この2点で院長先生の役割は十分すぎるぐらいの労力かと思いますし、この2点にのみ院長先生が力を注げばクリニックの数字は伸びていくはずです。

では、
「社長」、「行政対応の責任者」、「経営責任者」の3つを誰かに任せればよいのだと思います。

「社長」とは医院の舵取りと方向性を決定し運営する実務者です。「行政対応の責任者」とは行政上から見れば院長が責任者でも裏方として全ての準備と段取りを完璧にこなす事務担当者です。また、歯科医院における「経営責任者」とは内外装を含めたクリニックの店舗管理、医院全ての売上や収支の管理、労務を含めた医院運営の管理、広報等医院の成長戦略の管理、節税等クリニックの安定経営のためのフローとストックの管理、など いわゆる昔でいう番頭さんのような存在です。

この上記の3つを任せられるいわゆる番頭さん(経営事務長)が必要なのです。
この番頭さんがしっかりしていれば、院長先生は診療と診療室の指揮に集中できます。

しかし、ですが・・・・

そもそも、この大事な大事な3つを任せられる事務長などいないと思います。
居たとしても月給100万は最低必要でしょうし、心臓部を任せるわけですから万が一、不正行為を図られた場合は致命傷にまでなりかねません。

そこで・・・

やはり経営事務長には奥様か、もしくは院長先生が女性の場合なら旦那様に任せるのが良いのではないでしょうか?
クリニックの経営は「診療室内の最高指揮官」と「医院と経営を管理する経営事務長」を分けることでパフォーマンスは4倍にも5倍にも飛躍すると思います。
是非、ご夫婦でより良いクリニックと素晴らしい人生を創り上げてください。

3.

クリニック 一般企業
(3) 社員が国家資格保持者(衛生士、看護師) 社員に国家資格が必要な職種もある

社員が国家資格保持者(衛生士、看護師)ということは、必然的に求人マーケットではターゲットが狭まります。そこへ歯科医院そのものの数が多いとくれば当然のことですが、診療の現場では看護師、歯科衛生士の不足となるでしょう。

世の中で良く言われる人材不足ですが、全企業、全クリニックが人材不足ではないと思います。何事に関してもそうですが、平均値ではなく一部の優良経営クリニックにならなければなりません。大多数の人材不足企業、大多数の経営不振企業の仲間入りを先生はしたいですか?

そうでなければ競争に勝たなければなりません。
そのためには優秀な人材を確保しなければならないのです。
では、実際にどうすれば優秀な歯科衛生士が求人広告を出してもないのに、応募が来て断るほど集まるクリニックを創るかをお話します。

まず、

1)清潔で綺麗な院長先生のコンセプトがハッキリした医院の内外装にしてください。

2)そして自由診療の売上をしっかりと上げてください。自由診療の比率は最低でも50%近くをキープしてください。

3)その後、診療日は週5日以内としてください。週に2~3日は休診です。
シフト制はダメです。必ず年間休診日を120日以上としてください。

4)(3)と同時に診療時間は18時までとしてください。9時~18時あたりが理想かと思いますが、立地条件や顧客層によって変わると思いますので参考にしてください。お昼休憩は2時間以上は長すぎます。1時間としてください。

5)(4)までが出来上がれば、ほぼ歯科衛生士の求人マーケットでは強くなります。
院長先生が望む人材層、年齢層、生活背景等も絞って求人マーケットへアプローチしてください。

6)望む人材をリクルート後は「予防を軸とした、あなた方が主役で活躍するクリニックを創る」というメッセージはしっかりと送り続けてください。
まだまだ細かいことはたくさんありますが、その辺りは次回にして大まかに言えば上記を実行すれば、ほぼ求人マーケットでは勝てます。

彼女達はリクルート市場では売り手市場だと思っていますし、実際そうなのでしょう。
がしかし、彼女達もまた、クリニックや院長先生とのミスマッチを繰り返し転職を重ねている人が多いのも実情です。退職する理由は様々でしょうが、やはり選ばれるクリニックになればよいのです。また、選ばれる理由も様々でしょうが極論からいうとクリニック自体のステイタス感とセンスだと思います。

4.

クリニック 一般企業
(4) 社員の大半が女性 職種によって様々

歯科医院を構成するスタッフは、ほぼ女性です。
まず、男性の院長先生は「男性と女性は真逆といっていいくらい、違う別の生き物」だという認識にたってください。
そうすれば、あまりに小さな事柄に腹を立てることなく、上手くコントロールできるかと思います。

もう1度いいます。
「全く違う生き物なんです」

そのあたりを理解した上で「仕事として、組織として、」の部分は厳しく指摘、指導し「未来を明確に描き伝え」「安心して仕事ができる会社」にする必要があります。

女性であり、従業員である彼女達は自分自身で創造し建設していくことが苦手なんです。
しかし、土台を作り導き管理する人がいれば、想像以上の力を発揮し活躍できます。

基本的に人は、組織のために働くのは忠誠心(会社の理念やトップの人間性)です。
基本的に人が、自分のために働くのは安心(社会的安心や私生活の安心)のためです。
基本的に人は、他者(顧客や上司、同僚)からの敬愛を受け職務を全うできます。

このあたりをしっかりと抑えた上で彼女達の将来の人生設計を助けていくというメッセージを送ってみてください。最強の組織が出来上がると思います。

ちなみに男性の場合はといいますと、
「経済強者という征服欲求」「権力への欲求」「著名への欲求」
が強いので色々とコストは高くつきます。
また、問題も女性より比較的大きな問題を起こしやすいです。

5.

クリニック 一般企業
(5) 顧客は「患者」 顧客は「お客様・クライアント」

「患者さん」・・・変な言葉ですよね。
「患者」に さん ですからね・・・。

「お客様」はやはりクリニックには馴染みにくいですよね。
やはり「患者さん」「患者様」といったところでしょうか・・・。

英語では「patient(PT)」ですが、ドイツ語は「クランケ(kr)」です。
医院内での呼称は「クランケ(kr)」がいいかもしれませんね。

さて、外来の方々が主な顧客である歯科医院においては、そこに従事するスタッフはやはり「ゲスト」「お客様」という発想が必要だと思います。
この発想がないと、そもそも自由診療は増えないでしょうし、ましてや物販といった今後の歯科医院の新しいモデルも創ることは出来ないと思います。

販売するサービスは医療行為ですが、迎える側のクリニックの気持ちと対応は「お客様」という基本姿勢は大事かと思います。
逆をいうと、その部分が出来ていれば、ほぼ一地域では勝者のクリニックになると思います。それぐらいクリニックの経営は簡単だということかとも思います。

6.

クリニック 一般企業
(6) サービス販売者=先生 サービス販売者=営業マン

歯科医院において「院長」はやはり顧客の側からすると1番診て欲しい術者です。
私だってやはりその医院の院長先生に診てほしいです。
おそらく治療に関しては大多数の患者さんがそう思うはずです。
ということは・・・・

院長先生が社長ではやはりダメなんです。
院長先生は現場の最高指揮官で、社長役の名番頭(経営のトップ)が必要です。

院長先生を1番理解し、院長先生が最大のパフォーマンスを発揮できるよう医院の土台作りが出来る人に任せてください。

あとは院長先生が診療室内だけのことに毎日、時間を集中することができれば、おのずとクリニックのパフォーマンスは高まってゆくと思います。

どうか、院長先生はご自身の生産能力を最大限に高めるよう、院長先生がやるべきではない仕事は全て優秀な人材に任せてください。

院長先生の大事な仕事は患者さんに向き合うことと、診療室内のスタッフのマネージメントです。その他は全て任せましょう。

もう1度言います。

何よりも優秀な経営事務担当者は絶対に必要です。